崖っぷち日本のユートピア社会学by大山昇悟

崖っぷちに立っている日本をどうしたらユートピア(理想郷)にできるか日々考え答えを探していくブログです

ユダヤ人迫害の歴史から学ぶ〜繰り返される全体主義の行方①

「世界のどこであろうとも、『人間』の根本的自由と平等を否認し始める国があったら、その国は強制収容所体制に向かう。しかもこれを途中で止めるのはひどく難しいのだ」

アウシュヴィッツを生き延びたユダヤ人、プリーモ・レーヴィ「これが人間か」より。

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今回から3回にわたり、ナチスドイツがユダヤ人に対して行った弾圧、虐殺についての記事を書きたいと思います。              

その理由としては、中国が今現在ウイグル人に対して行っている様々な人権侵害を紹介するにあたり、過去の歴史から中国の体制を逆照射する必要があると考えたからです。

 

ある民族に対しての弾圧、虐殺が、なぜ国際社会から批判されながらも公然と行われ続けているのか?

筆者が思うに、そういう国は、ある体制が国家として形成されてしまっています。

 

その体制と全体主義と言われるものです。

 

全体主義の特徴としては、以前他のブログでも述べましたが、

強制収容所

②公然と行われる(警察権力等の)暴力

③粛清→「厳しく取り締まって、不純・不正なものを除き、整え清めること」または「不正者・反対者などを厳しく取り締まること」

 

以上の3つを特徴として挙げました。

 

今回はもう少しイメージがしやすいように、細かい特徴も挙げておきます

 

・単一の独裁者によって施行される規則

・単一の与党政党の存在

・報道機関の完全な管理ではないにしても、厳格な検閲

・親政府プロパガンダの絶え間ない普及

・すべての市民のための兵役での義務的なサービス

・強制的な人口管理慣行

・特定の宗教的または政治的グループおよび慣行の禁止

・政府に対するあらゆる形態の公的批判の禁止

・秘密警察または軍によって施行された法律

 

これら全体主義の主だった特徴を眺めてみると、まさしく現在の中国がそっくり当てはまるのではないでしょうか。

 

そしてこのように国家が国民を一元的に管理コントロールできる体制ゆえに、特定の民族や、特定の思想・信条を持った集団に対して、弾圧、虐殺が可能になってしまうのです。

 

中国のウイグル人に対しての問題は、ここ1〜2年ようやく世界に浸透し始めており、米、英、カナダ、E Uなどは対中制裁措置を発動しています。

 

国際社会においてウイグル人の人権問題を見過ごすことはできない、というコンセンサスが形成されてきていると言っていいでしょう。

 

ところがそのような中、一部異なる態度を取る人達も目立ってきました。

 

例えば、バイデン大統領は2021年2月、ウィスコンシン州での市民との対話集会において、ウイグル人人権問題を、

「それぞれの国の文化の違い」と発言しました。

 

もちろん他にも「米国としては、中国当局の香港での抑圧、台湾への威迫、ウイグルでの虐殺的な工作などの人権弾圧に抗議をしていくことを習近平主席にも伝えた」と発言しているので、公平に見ないといけないとは思いますが、ウイグル人が中国に弾圧されているその内容を少しでも知っているならば、「文化の違い」という言葉が出るのはどうかと思います。

 

ウイグル人を弾圧、虐殺するのは中国の文化だから、その文化は尊重しなければならない」と受け取られても仕方ないでしょう。

 

次はユニクロの創業者、柳井正氏の発言です。

 

柳井氏は今年4月の決算会見で、

NHKなどの報道によると、柳井氏は新疆ウイグル自治区から調達した綿花を使用しているかという記者の質問に対し、強制労働などの問題がある工場との取引は否定したうえで、「これは人権問題というよりも政治問題。われわれは政治的に中立なんで。これ以上発言すると政治的になりますんで、ノーコメントとさせていただきます」と回答を控えたといいます。

 

一応ウイグル人の強制労働などの問題がある工場との取引は否定しているものの、「人権問題」「政治問題」と巧みに言い換えているところに、何かしらやましさがあるのではと勘ぐりたくなります。

 

この時の発言に対して各方面から批判の声が高まったり、米税関当局から一部製品の輸入を差し止められるなどの対応をされた為か、10月14日の決算会見では多少配慮をした発言をしています。

 

「(サプライチェーンに関して)人権侵害を絶対に容認しない」と宣言しました。

この宣言が本当の気持ちであれば良いことです。

 

ですが柳井氏の性格なのか、そのあともうじうじと微妙な発言をしてしまいます。

 

柳井氏は「安易に政治的立場に便乗することはビジネスの死を意味する」「多くの企業に政治的選択を迫る風潮に強い疑問を感じる」とも訴えています。

 

しかし…ウイグル人の苦しみや死を前提にしたビジネスは容認してもいいのでしょうか。それこそビジネスの死のような気がします。

 

また、経済活動の自由は、人の不幸の上に成り立たせるものではないと筆者は考えます。

 

次はスポーツ用品大手のアシックスです。

 

Twitter上では「あのアシックスが…」とかなり炎上しました。経緯が少しややこしいですが一連の流れをかいつまんでまとめると…

・今年3月25日、アシックスの中国法人はSNSウェイボーで声明を発表。新疆ウイグル自治区を含めた中国国内から引き続き原材料を購入する方針を明らかにする。

・その上で、台湾は中国の一部分とする「一つの中国原則を堅持」し、「中国の領土と主権を断固として守り、中国に対する一切の中傷やデマに反対する」と表明。

・アシックス本社の広報担当者によると、この声明は本社の了解を得て中国法人が出したものだという。

・ところがその4日後の29日には、「中国法人が許可を得ず出した」とその声明を削除。

・その理由については「広報担当者の認識が間違っていた」としている。

・その上で「全ての原材料がアシックスの定める調達ポリシーに合致していることを確認しています」と強調した。

 

ユニクロにも見られることですが、アシックスもウイグル自治区産の強制労働で栽培された綿花は一切使用してません!」と明確には否定していないことです。

 

わかりづらい用語を使用することによって、この問題をはぐらかしたいのではと思ってしまいます。

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*アシックスのシューズに新疆綿は使用されていない?

 

次は政治での事例です。

今年の3月頃から、日本ウイグル議員連盟、日本・チベット国会議員連盟南モンゴル支援議員連盟、人権外交を超党派で考える議員連盟の4つの議員連盟が協力して、“人権侵害に対する非難決議の国会での採択”を模索してきました。

 

ですが案の定中国とズブズブの公明党(創価学会)と、親中派自民党議員が反対し、人権侵害非難決議は採択されませんでした。

 

おそらく反対していた議員は様々な言い訳を連ねていたと推測しますが、人権侵害を非難しないということは、「人権を侵害しても構わない」と表明しているのと同じことです。

 

中国のウイグル人に対しての弾圧、虐殺を国際社会が非難している中、日本の一部の企業や政治家は人権問題にはやや腰砕けになっているように感じます。

 

一連の中国によるウイグル人の人権問題について様々な報道がなされる中、筆者はある素朴な疑問を感じました。

 

それは第二次世界大戦のドイツによるユダヤ人の虐殺については、歴史的に悪の判定がなされており、学校教育でも学んでいるはずなのに、現代のホロコーストであるウイグル人の問題については関心がなかったり、態度を曖昧にしている人が少なくないからです。

 

ちなみにドイツによるユダヤ人虐殺の人数は約600万人です。

 

そして現代の中国においてウイグル人強制収容所に入れられ、洗脳、拷問、強制労働、虐殺されている人数は約100〜300万人と推定されています。

 

第二次世界大戦の当時、ユダヤ人がどこかに連れ去られていることを知っている人はいましたが、その後ユダヤ人がどういう仕打ちを受けているのかは、実態がなかなか外の世界には伝わりませんでした。

 

それが少しずつ明るみになったのは、強制収容所から脱走した人達による証言でした。

 

そしてウイグル人の問題も、中国が頑なに否定、もしくは「再教育施設」という詭弁を弄する中において強制収容所からなんとか生き延びた人達の証言によって少しずつ明るみになってきています。

 

もしこの問題をスルーすれば、何のためにユダヤ人が迫害された歴史を学んだのか、意味がなくなると筆者は考えます。

 

ですので、ウイグル人問題の価値判断をつけるようにする為に、まずは今一度第二次世界大戦時のナチスドイツによるユダヤ人迫害についての記事を、次回以降書いて行きたいと思います。

 

 

 

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