崖っぷち日本のユートピア社会学by大山昇悟

崖っぷちに立っている日本をどうしたらユートピア(理想郷)にできるか日々考え答えを探していくブログです

フルCGアニメで描く北朝鮮強制収容所 映画「トゥルーノース」

この映画「トゥルーノース」在日コリアンの清水ハン英治監督が北朝鮮強制収容所に関する本を読んだことが契機となり、10年の歳月をかけて自己資金で制作した。(Wikipediaより)

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ストーリー

【1960年代の帰還事業で日本から北朝鮮に移民した家族の物語。平壌で幸せに暮らすパク一家は、父の失踪後、家族全員が突如悪名高き政治犯強制収容所に送還されてしまう。過酷な生存競争の中、主人公ヨハンは次第に純粋で優しい心を失い、他人を欺く一方、母と妹は人間性を失わずに生きようとする。そんなある日、愛する家族を失うことがきっかけとなり、ヨハンは絶望の淵で「生きる」意味を考え始める。やがてヨハンの戦いは他の者を巻き込み、収容所内で小さな革命の狼煙が上がる。】(Amazonより)

 

 

ストーリー自体は、北朝鮮においてはもはや日常の風景と言えるかもしれない。主人公とその家族が父親の政治的な犯罪に巻き込まれてしまい、主人公とその母親、幼い妹の三人が政治犯を収容する強制収容所に連れて行かれる場面から始まる。

このアニメ映画を観始めた直後に、筆者は映画の世界に引き込まれたのだが、それはひとえにフルCGアニメの効果によるものだ。

トイストーリー」以降、通常の2Dアニメよりも3Dアニメが劇的に増えたが、その内容はと言えば、大抵小さい女の子がうるさくはしゃぎ回るようなものが多いような印象である。どの作品もそうとは言えないが、嫌でも3Dアニメ=「小さい子供達がうるさく大袈裟にはしゃぐアニメ」というイメージが付着しているように感じる。

それに引き換えこの「トゥルーノース」は、ストーリーの冒頭から三人の家族が住む家に警察が踏み込む場面が展開される。

トラックに乗せられた後も、トイレ休憩さえ取らせてもらえないエピソードがリアルすぎて、ハリウッドのフルCGアニメみたいな予定調和の甘い世界ではないという現状を観る者に突きつけてくる。その割には登場人物達が見た目フルCGアニメのほっこりキャラなので、悲惨すぎて目を逸らせたくなる場面を軽減させることに成功しているのである。

物語は政治犯が入る強制収容所の中で展開される。収容所といってもそれぞれの家族単位で、ボロボロの掘立て小屋で寝泊まりする。

日中は女性が軽作業、男性は収容所敷地内の荒地や炭鉱らしきところで力仕事に従事させられる。

食べ物は一応配給らしきモノはあるのだが、カロリーも量も足りない為、みんな常にお腹を空かせている。

主人公のヨハンは、収容所に入った時点では小学生くらい。ある日金網越しに管理者の子供達と思しき集団がヨハンをからかい、四つん這いにさせて豚の物真似を強制する。ヨハンは屈辱に悔し涙を流すのだが、数年後にはヨハンは自ら進んで豚の物真似をして、管理者の子供達から食べ物を恵んでもらうようになるのである。

この辺のエピソードは、「飢え」というものは人間の尊厳を簡単に剥ぎ取ってしまうものだということを表しているが、飽食の現代人にはなかなか深くは理解できないと感じた。

主人公のヨハンは以降、次第に心が悪い方向に向いていき、管理者達の手下になったり、収容者を密告したりするようになる。

ヨハンの母親と妹は変わってしまったヨハンを快く思わない。家族の間に溝ができかけるが、ヨハンも必ずしも完全に悪には染まりきらない。

それはやはり母親と妹への愛情と、収容所内で出会った親しい友人の存在が大きかった。

この映画を観ていて思ったのは、ベタな分析ではあるが、心を許せる人間が身近にいることが、人間が悪の世界に進むのを押しとどめる効果があるのではないかと感じた。

物語の後半、ヨハンは妹と友人の三人で収容所を脱走する計画を立てる。果たして計画は上手くいくのか……。

ここ数年は中国のウイグル人弾圧が大きく取り上げられている為か、北朝鮮の人権弾圧は以前ほどは話題に昇らない。

だが実際は北朝鮮の独裁体制はずっと継続している。そしてそんな北朝鮮に中国は経済的な支援を続けており、かつ軍事的な繋がりも強い。

例えば2021年の夏から秋口にかけて、中国と北朝鮮極超音速ミサイルの発射実験を成功させている。

この極超音速ミサイルはマッハ5で飛来し、軌道なども途中で変えられる為、迎撃不可能とされている。

中国と北朝鮮が同じ時期に、このミサイルの発射実験を行っていることは偶然とは考えられず、ミサイル開発の時点で交流があったと考えるのが自然である。

そしてそのミサイルの標的になっている国の中には、当然日本も含まれているだろう。

それに対して日本はいまだに有効な手立てを打ち出せずにいる。そればかりか中国に対しては政治家のみならず、一般国民でさえ中国の属国になりたがっているように見える。

日本が今の延長線上で進むのならば、映画「トゥルーノース」は北朝鮮の物語ではなく、未来の日本になる可能性が高くなっている。

だが「トゥルーノース」の意味は直訳すると「北の真実」だが、英語の慣用句では羅針盤という意味も持っているらしい。

この映画を観ることによって、日本の未来の羅針盤はいかにあるべきかを考えるきっかけになればと思う。

 

 

 

 

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