崖っぷち日本のユートピア社会学by大山昇悟

崖っぷちに立っている日本をどうしたらユートピア(理想郷)にできるか日々考え答えを探していくブログです

大迫傑選手の強さから学ぶ

3月8日に行われた琵琶湖マラソンの結果、大迫傑選手が1日の東京マラソンで出した2時間5分29秒を上回る選手が出なかった為、東京オリンピックのマラソン日本代表最後の一枠は大迫傑選手に決定しました。

 

今回のブログでは、大迫傑選手の速さと強さに迫っていきたいと思います。

 

以下、大迫傑選手の簡単なプロフィールです(Wikipedia及び大迫選手自身の著書より参照)

【・1991年生まれ、東京都町田市出身

・小学生の頃は野球、水泳、剣道などのスポーツ歴あり。陸上は中学生の頃から始める

・2008年、高校2年生としては史上4人目となる5000m13分台を記録(普通の人は大体25〜30分かかる)

早稲田大学在学中の2013年に、10000mで日本歴代4位(当時)の27分31秒を記録

・大学卒業後2014年に日清食品グループに所属するも、1年後にはナイキ・オレゴンプロジェクトに所属する

・2016年リオオリンピックに10000mで出場、17位

・2017年初マラソンとなるボストンマラソンで2時間10分28秒

・2018年シカゴマラソンで2時間5分50秒の日本新記録を出す

・2019年東京オリンピック選考レースとなるMGCで3位

・2020年3月1日東京マラソンにて自身の記録を上回る2時間5分29秒をマークする】

 

陸上にまったく興味のない人にもわかるように解説すると、10000m、つまり10Kmですが30代、40代の男性だと大体50〜60分かかります。

大迫選手は10Kmを27分で走るので、普通の人の2倍は速いことになります。

 

余談ですが、数年前に自分の10Kmの記録を縮めたいと思い立ち、当時大体54分くらいで走れていたのを45分切りを目指してトレーニングしてみたことがあります。

 

インターバル走、ペース走、スクワット、筋トレなどを織り交ぜて、2〜3ヵ月経った頃には49分台で走れるようになりました。

 

これからもっとタイムを縮めようとした矢先に母の病状が悪化した為、諦めざるを得ませんでしたが、おそらくあと半年続けていたら、45分は切れていたと思います。

 

話しを元に戻して、大迫選手が東京オリンピックの代表入りを決定づけた、3月1日の東京マラソンを簡単に振り返ってみたいと思います。

 

このレースの注目ポイントは2つあり、まずは大迫選手の2時間5分50秒の記録を上回ったうえで、日本人最上位でゴールをすることが(琵琶湖マラソンが残っているとはいえ)東京オリンピックの代表候補に近づくという点です。

 

もう一点は、2時間6分台の記録をもつ設楽選手と井上選手は、上記の記録を抜くことが絶対条件になる為に、レースの最初から日本記録を抜くペースで走らないといけない為、どれくらいのペースでレースに入っていくのか、そして大迫選手はそれについて行くのか、もしくは自らの記録を抜く為の走りを選択するのか?

 

以上の2つが注目ポイントになるレースでした。

 

当日は風もほとんどなく、気温も11.5度と絶好のマラソン日和。

ペースメーカーは、2時間3分台と2時間5分台の2種類のペースメーカーが用意されました。

 

スタート直後、前回のMGCで1人で抜け出した設楽選手は2時間5分台のペースメーカーにつきます。

 

井上選手は2時間3分台のペースメーカーにつき、大迫選手は先頭集団の後方につきます。

「マラソンはエネルギーをいかに少しずつ出していくかが重要です。(中略)他の選手が仕掛けたときに急な対応しようとすると、自分のエネルギー量が急激に減ってしまう。だから最初は目立たないようにいつも後ろの方で一歩ひいて走るようにしています」(大迫傑/走って、悩んで、見つけたこと)より

 

大迫選手は自著で語っていた通りの位置どりでレースを進めました。

 

23Km辺りで大迫選手が遅れ始めます。対して井上選手は第一集団からは遅れたものの、テレビの画面上で観る限り、「走り、表情」がまったくぶれずに快調に走れている印象でした。

 

そして30Kmの時点では、井上選手と大迫選手の時間差は12秒まで開きます。画面上でも手前の井上選手の後ろにいるであろう大迫選手が小さく見えて、時には画面上からも姿が見えなくなったりしました。

 

井上選手の調子の良さを考えると、このまま日本人トップは井上選手で行くのではと思われましたし、実況アナウンサーや解説陣にもそういうムードが漂ってきていました。

正直、自分もこの時点で大迫選手は今回のレースは難しいかもと思い始めていました。

 

ところが、30.6Kmから大迫選手はジワリと井上選手に迫ってきます。テレビ画面でも大迫選手の追走する姿が大きく映るようになります。

 

そして皮肉にも大迫選手が、井上選手のすぐ後ろまで迫ってきた場面で、あれほど淡々と走っていた井上選手の表情が歪み始めて、明らかにキツい状態になっているのがテレビ画面で映されました。

 

そして、32.5Kmすぎ、大迫選手は井上選手の左に並び、横目で井上選手の状態を見ながら抜き去ります。(ここがスポーツ観戦の醍醐味!)

 

その後はさらにペースをアップし、井上選手との距離を離して行きます。

 

自身の日本記録の更新を意識し始めたのは、本人曰く38Kmをすぎた辺りからだそうですが、解説陣も沿道の応援も、記録更新を思いっきり期待し出しました。

 

そして、最後の直線コースに繋がるカーブを左に曲がった辺りで、日本記録更新を確信した大迫選手は手を叩き、両手を広げ、ガッツポーズを決めてテープを切ったのです。(2時間5分29秒)

正直テレビを観ていて凄いシビレました!陸上の世界では0.1秒早く走れるだけでも本当に凄いことなんです。

それは以前の自分の限界を、練習も含めて全て超えることを意味するからです。

 

ちょっとウルッと来てしまいました…。

 

今回のブログの題名には「大迫傑選手の強さから学ぶ」としてありますが、なぜ「速さ」ではないかというと、三浦しおんさんの駅伝小説「風が強く吹いている」で、長距離選手への1番の褒め言葉が、

「速い」ではなく「強い」なのだそうです。

 

ですので、「強さ」という言葉を使いました。

 

以下、大迫傑「走って、悩んで、見つけたこと」から大迫選手の強さの秘密に迫っていきたいと思います。

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まずは、大迫選手のマラソンに対しての捉え方です。「トラック競技においてフィジカルが占める割合は約80%。それがマラソンになるとフィジカルが60%、メンタルが40%ぐらいの感覚になります」(大迫傑/走って、悩んで、見つけたこと)より

 

そしてフィジカルに関してコントロールすることの限界を述べた上で「でもメンタルに関しては、自分がコントロールしようと思えばいくらでもできる。僕はそこに世界と戦える可能性を感じたのです」(大迫傑/走って、悩んで、見つけたこと)より

 

一般の市民ランナーからすると、マラソンはフィジカルが90%なのではないかと思ってしまいそうですが、メンタルが40%とは?

これは一流の選手のレベルまで行ってからの話しなのかもしれません。とはいえその40%可能性に世界と戦おうとしている大迫選手の気概を見いだせます。

 

ラソンの成果に貢献しない生活の余分なものを捨てる、もしくは犠牲にする

「1日24時間という制約がある中で、競技においては、いかに必要のないものを取り除いて、必要なものだけで自分の身を固めていくか、無駄を省いていく作業がすごく大事になってきます」

「僕はトレーニングにおいて、プライベートな時間や色々なものを省いていき、満たされない状態に自分を置くことがすごく大事にだと思っています。自分に酔いたいわけではないけれど、俺はこれだきのことを犠牲にして頑張っているんだと、楽しみをなくすことで自分の世界に入っていける」(大迫傑/走って、悩んで、見つけたこと)より

 

個人的にはこの捨てる」というのが最も難しいと感じます。現代は本当に誘惑の多い時代だと思うのです。娯楽も情報量も30~40年前から比べると10倍以上あるのではないでしょうか。なにか一つのことを極めてひとかどの人物になろうと志ている人にとっては、「捨てる」というのは最初の関門になるかと思います。

 

例えば自分の知っている某格闘家は現役の間は絶対にコーラやソフトクリームは食べないと言っていて「そういうストイックな姿勢が試合中に生きてくる」と述べていました。

 

☆一瞬一瞬のトレーニングに精魂を込める、未来のために究極に今を積み重ねる

「強くなるというのはすごく単純なことで、毎回ハードなトレーニングをして、ハードな毎日を過ごす。それを毎週繰り返していくだけです。(中略)極端なことを言えば、一本一本、一瞬一瞬が大事。例えば、練習で200mを20本走るとします。このとき20本を走ると考えるのではなく、この一本、この200mをどう走るのかといいうことを考えて、それを20回積み重ねる」(大迫傑/走って、悩んで、見つけたこと)より

 

ついついやってしまいがちな努力として、努力そのものが目的になってしまい、いつのまにか惰性的になってしまうことです。限られた時間内で成果を出すという目的からすれば、どんな分野であれ無駄にできる時間、労力は皆無でしょう。大迫選手は一瞬一瞬を無駄にせず、精魂込めて練習しているからこそ、「自分は究極に今を生きている」と言い切っているのでしょう。

 

☆鏡に向かい、声に出して、自己肯定感を高める

トレッドミル(ランニングマシン)で走るときは、鏡に映る自分を見つめながら自分は強い、自分はタフだ、自分はチャンピオンになるんだということを声に出して自分に言い聞かせています。これを始めてから、すごく自分を肯定できるようになったし、自信がつくようになりました」(大迫傑/走って、悩んで、見つけたこと)より

 

一般的には実力があるから自信があると考えられがちですが、自信が実力に繋がるという面もあるのです。そのためには自分に言い聞かせるのが効果的ではありますが、鏡を見て声に出してという方法は気恥ずかしくなり、なかなかできるものではありませんが…(実体験です)

 

☆「きつい」を冷静に分析する

「練習をしていると『きつい』と感じることがあると思います。(中略)きついという感覚はすごく感覚的なもので、冷静に考えて、そのきつさを分析すると意外と対応できるものです。『今きついのはどこ?呼吸?脚?脚のどこ?』そう問いかけると身体全体がきついわけではないと気づくので、少し楽になるんです」(大迫傑/走って、悩んで、見つけたこと)より

 

個人的にも仕事でトラブルがあった時に、テンパって「大変だ、大変だ!」と感じてやってると余計に大変に感じてしまい、身体も心も疲労が増して来る感覚があります。

 

自分も現在の仕事のテーマが、マルチタスク、ミス、トラブルをいかに平静心でこなすかがテーマなのです。

 

☆取り越し苦労をしない。自分の自由になることと、ならないことを分けて考える

「不測の事態というのは、色々と想像しすぎることによって起きるのではないでしょうか。全てを起りうることとして捉えて、柔軟に冷静に対応できるという自信があれば、何が起こっても不測の事態にはなりません。過大な想像をしなければ、ただ起きたことに過ぎないと思えるし、結局色々と考えてみたところで、だいたいのことは起きないものです」(大迫傑/走って、悩んで、見つけたこと)より

 

取り越し苦労がなぜいけないかというと、心の世界においては、今現在取り越し苦労をしていると、それは未来のことではなく今の苦労」に変換されてしまうからです。同じ理由で持ち越し苦労もそうです。その苦労が心を非常に疲れさせるのです。

 

そうであれば明るい未来を確信しつつ、明るい未来を現実化すべく、淡々とした努力をするしかないということです。

 

あと大迫選手は自分の自由にならないメディアでの報道などは、最初は自分の発言が正確に伝わらないことに対して心外だと思っていたみたいですが、のちには割り切って捉えるようにしているようです。(ブログもメディアの一種なので慎重にしたいと思います)

 

最後にあらためて、東京マラソンで大迫選手の強さが出た場面を振り返ってみたいと思います。

 

23Kmを超えて、井上選手との差が少しずつ開いていった時、大迫選手はチラッと「もうダメかも」という思いが一瞬頭によぎったようですが、「自分のキャパシティ以上に走ったら(スピードを上げたら)潰れる」と判断し、井上選手との差が開き過ぎないギリギリの遅れを保ちながら自分のペースで走っていたとのことです。

 

井上選手のペースは2時間3〜4分台のペースだった為、「自分の記録が破られるかも」という不安もあったと思いますが、自著で述べていた通り、冷静に「自分の身体と対話し」逆転可能な位置を保ちつつレースを進めていきました。

 

そして32Kmで井上選手に並び、間髪入れずに差を広げていった場面はまさしく、ケニアで培った「一人で走る、一人で耐える」という心の強さがモノを言ったと思います。

 

今回、大迫傑選手の「走って、悩んで、見つけたこと」を読んでみて、心の強さというものは、単なるスポ根的な根性論だけではなく、心の総合的なコントロールなのではないかと思いました。

 

東京オリンピックでの大迫傑選手の活躍を心から応援したいと思います。

 

 

 

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