崖っぷち日本のユートピア社会学by大山昇悟

崖っぷちに立っている日本をどうしたらユートピア(理想郷)にできるか日々考え答えを探していくブログです

読書人口倍増計画・お勧め本3「ザ・サークル」

今回お勧めする本はエマ・ワトソン主演で映画化もされたザ・サークル(上下巻)」(デイヴ・エガーズ/ハヤカワ文庫)

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あらすじ

【世界一と評されるインターネット企業、サークル。広々とした明るいキャンパス、信じられないほど充実した福利厚生、そして頭脳と熱意と才能をかねそなえた社員たちが次々に生み出す新技術―そこにないものはない。どんなことだって可能なのだ!サークルへの転職に成功した24歳のメイは、新生活への期待で胸をいっぱいにして働きはじめるが…。】(Amazonより)

 

この本は有名なディストピア小説である1984素晴らしい新世界の前奏とも言える現在進行形のディストピア小説である。

 

物語の舞台となる「サークル」というIT企業は、GoogleAppleFacebookを足して3で割ったような大企業だ。

 

主人公のメイはサークルに勤める友人の推薦により、誰もが憧れるサークルへの転職に成功する。

 

メイの仕事自体はカスタマーセンター的な、お客さまの要望やクレームを処理し、改善するというものだが、サークル内での仕事や人間関係、アフターファイブの生活を作者は思いっきり揶揄している。

 

*以降、多少のネタバレあり

 

例えばサークルには、社内「サークル」とでもいうべき様々なコミュニティがあり、参加は強制ではない。だがメイは強制ではないことをいいことに(当たり前だが)休日にはプライベートを優先してしまう。

すると月曜日にはニコニコした顔の社員の男女が「なぜサークルに参加しないのか?」と問いただすのだ。

 

彼らが主張するのは「参加は強制ではないが、ソーシャル(社交的)であるのは良いことだ」として、参加しないメイを不思議そうな顔で見るのである。(ちなみにこの場面、筆者が映画版「ザ・サークル」を観ていた時、通りかかった家族が「気持ち悪い👎」と呟いた)

 

さらにFacebookを彷彿とさせるSNSに対して、メイは有能でソーシャルな社員であることを示す為に大量のタイムラインに「ニコマーク」と「ムカ(怒り?)マーク」をつけるのだ。

 

この辺までは現代でもネットに翻弄されている人達が読めば、少しだけ身につまされるエピソードかもしれない。

 

だが次第に物語は怪しげな方向に進んでいく。

 

サークルは政治家と手を組んで、Facebookのような SNSから選挙の投票ができるようにし、さらに投票率を上げる為に、そのSNSへの登録を法律で義務付けしようとするのである。

 

さらにメイが起こしてしまったちょっとした事件をきっかけに、「人はカメラに写ってないことをいいことに、他人に対して秘密を作ったり、時にはウソをつくのだ」として、世界のあらゆる場所にカメラを設置し、またサークルと懇意の政治家も自らを「透明化」すべく身体にカメラをつけるのである。

 

外部のカメラと、人間につけているカメラにより、第三者がいつでも特定の人の生活を見ることができるようになった。人は「秘密を持つことも」「嘘をつくことも」できなくなり「透明化」で素晴らしい社会になるだろうというサークルの主張を社員は両手を上げて喜ぶのである。

 

ちなみに小説版と映画版では細部が微妙に違っており、この記事も両方を見た筆者の記憶が混ざってしまっているかもしれない。

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映画版は主演のエマ・ワトソンの可愛いイメージを壊さないように主人公のキャラクターを変えてある。とはいえ映画としての出来は良いと思う。よりディストピア感を感じたい人は小説をお勧めしたい。

 

この小説を筆者が勧めた理由は、この物語で描かれている世界は現代でもすでに起こりつつあることであり、人類はディストピアに片足を突っ込んでいることに気がついてほしいということである。

 

「自由」とはそもそも何なのか?これについて明確に答えることが出来ない限り、サークルの作る監視社会を喜ぶ側になってしまうのである。

 

 

 

 

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