崖っぷち日本のユートピア社会学by大山昇悟

崖っぷちに立っている日本をどうしたらユートピア(理想郷)にできるか日々考え答えを探していくブログです

真実に近づく方法と、紛争解決のための最適解-『世論』で読み解くロシア・ウクライナ紛争の行方③

今回、「ロシア・ウクライナ紛争の行方」の結論を述べるにあたり、前々回で視聴した「ロシア悪派」「ロシア擁護派」の動画を視聴した感想を改めて素直に述べてみたい。

「ロシア悪派」の動画では、ウクライナ出身の国際政治学者・グレンコ・アンドリー氏と、政治評論家・ナザレンコ・アンドリー氏の意見を聞いた。

ナザレンコ・アンドリー氏はとにかくウクライナの自由を守りたいという思いが伝わった。同時に日本が直面している中国問題にも言及しており、それ以外でも日本の国益になるようなことを多々述べていた。

印象に残った点としては、ウクライナ東部について「そもそもなぜ東部にはロシア人が多いのか?」についてウクライナの歴史を絡めて述べており、もしナザレンコ氏の言うことが事実だとしたら、「ロシア擁護派」としてはやや判断が難しくなるような気がした。筆者としては、今後も時間が許す限りウクライナの歴史も勉強していきたいと思った。

グレンコ・アンドリー氏の意見については、ややプーチン(ロシア)を最初から悪玉として決めつけすぎているような印象を持った。

「ロシア擁護派」の動画では、国際政治学者のジョン・ミアシャイマー氏、言語哲学者のノーム・チョムスキー氏、ノンフィクション作家の河添恵子氏の三人。

まずミアシャイマー氏については、動画の出だしにウクライナ・ロシアの紛争について、責任の所在を明確にする為には、原因を明らかにしなければならない」という言葉と、この紛争については「勝者=ロシア」「敗者=ウクライナ」「責任を取る者=アメリカ」をきっちりと言い切ったのが印象的だった。

チョムスキー氏の意見で印象的だったのは戦争犯罪人についての扱い方」の話しで、歴代アメリカ大統領の影の部分について。暗にアメリカ大統領は常に戦争を起こしているが、その戦争責任は問われないということを今回のウクライナ紛争に絡めて示唆していたのが印象的であった。

河添恵子氏は、ウクライナ・ロシア紛争をグローバリストとロシアの資源戦争という捉え方をしており、興味深い意見だと思った。

前回、前々回とリップマンの「世論」を引き合いに出して、散々「ニュースと真実は同一物でない」ことを強調したり、ステレオタイプがいかに人間の見方、意見を曇らせるかを述べてきたが、そろそろ結論を出そうと思う。

「世論」において民主主義を成立させることの難しさを縷々述べていたリップマンではあるが、一個人としての「真実に近づく方法」をいくつか挙げている。

それは、

①好奇心(*知的好奇心or知的探究心)

②開かれた心

③信頼できる権威者(専門家)から学ぶ

の三点である。

この三つを実行することによって「あまりにも大きく、複雑で、移ろいやすい社会」で起きた出来事から真実に近づくことが出来るとしている。

そして以下は筆者の付け足しだが、「移ろいやすい社会」であれば、当然移ろいやすい世界の中で、変わらない普遍的な原理原則について書かれてある「古典」を勉強するのは外せない。また情報のアップデートもしなければならない。

また、戦争につきものの「当事国同士のプロパガンダ」とインターネットによる情報過多には翻弄され過ぎないように注意しなければならないと考える。

それでようやく「真実に近づきつつある…」ようになるようではあるが…。

それらを踏まえた上で今回のウクライナ・ロシアの紛争についての筆者の見解は、

「ロシア擁護派」の立場である。

先のロシア擁護派の動画を視聴した限りでは、そちらの方が物事のそもそもの原因をしっかり突き止めた上で、ロシアの行動の是非、アメリカ(NATO)の行動の是非を、冷静に論じている印象を受けた。

そしてロシア擁護派3人の共通点としてはロシアを擁護しつつも、ロシアの今回の行動に対して一定の懸念と、非難の気持ちを持っていることだ。

そういう意味では公平な見方をしていると言えると思う。

さらに筆者がロシア擁護の立場を取ったのは、③の信頼できる権威者として、筆者の恩師であるE先生の意見が大きい。

E先生は年間3000冊の本を読み、英語も堪能で若い頃は海外で仕事をしておられた。E先生は80年代後半にはアメリカの大統領としてトランプ氏を推したり、90年代初頭にはイギリスのEU(当時はEC)の離脱を予測していた。(それらは書籍にもなっている)

そしてロシアに関しても10年くらい前から、プーチンに関しての情報をコンスタントに発信しており、その裏には中国とロシアを組ませない意図があったとのことである。

さらにE先生以外にも、国際政治学者のジョン・ミアシャイマーはその分野では大家と言えるし、それ以外の言論人でロシアを擁護している人として、馬渕睦夫氏、河添恵子氏、及川幸久氏、渡辺惣樹氏は他の分野でも筆者と意見が9割方重なることが、筆者のロシアを擁護する確信を強めたと言える。

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改めて今回のウクライナ・ロシア紛争を概観し、価値判断をするならば、

米ソ冷戦が終わり、ワルシャワ条約機構を解体したにも関わらず、NATOは解体せずに東方拡大し続けた。さらにロシアにとっては、かつてのアメリカにとってのキューバのような位置づけにあたるウクライナをも、ロシアの再三の拒否反応にも関わらず西側はNATO入りを勧め、ウクライナ東部のロシア系住民の虐殺、ドローンによる攻撃を受けるに至り、仕方なくロシアは自国防衛の為にウクライナに侵攻したと考えられるのだ。

だが、日本の保守層の中には、上記を踏まえた上で、「だからと言って、ロシアはウクライナに侵攻していいのか?」という反論を持ち出すことが多いが、リップマンの「世論」を引用し、この意見に対して言うとすれば…

ステレオタイプは空間と時間を取り込むことができない」のである。

つまり日本人が頭の中で想像している「ロシアと国境を接しているウクライナというステレオタイプ像と、実際にロシアに住んでいるロシア人にとってのウクライナ像は、その重要度と危機感が全く違う。

違うからこそ、ウクライナNATO入りし、そこに核ミサイルを並べられれば、ミサイルは10分でモスクワに届いてしまうという状況に対して、そのことが真に恐怖として実感されるからこそのロシアの行動なのである。

さらに「ロシア悪派」が多い現在の日本人の印象をクラウゼヴィッツの「戦争論を引用し述べてみたい。

クラウゼヴィッツの戦争の有名な定義に「戦争とは、他の手段をもってする政治の延長である」というものがあるが、これを今回のロシアに当てはめてみれば、あくまでもウクライナへの侵攻は政治の延長であり、外交などの交渉がうまく行かなかったからこその「武力による解決法」を選択したのである。

したがって、ロシアとしては達成したい何かしらの「戦争目的=政治目的」があるはずなのだ。

このロシアの戦争目的こそが、以前から要求していたウクライナ非武装中立化」なのである。

ところがこの紛争が始まって以来、クラウゼヴィッツが「戦争論」で指摘していたある現象が日本(or世界)で起きているのだ。

それは「一旦戦争が始まると、その戦闘行為にばかり注目が集まり(手段の為の戦闘が目的化され)本来の戦争目的=政治目的は、後方に押しやられる」と。

ロシアが2月24日にウクライナに侵攻して以来、注目されてるいるのは、「どこそこで一般人が○○人死んだ」や、単なるプーチン、ロシアバッシングが多く、「そもそもロシアはなぜこのような行動を起こしたか?」の原因はもとより「ロシアの戦争目的は何か?」などが後方に押しやられ、顧みられることがあまりにも少ない。

代わりに、「もともとプーチンは領土拡大の野心を持っていた、悪の帝国主義者だった」という見方が広く喧伝されている。

ロシア擁護派からすると、戦闘行為ばかりを感情的に取り上げ、そもそもの原因やプーチンの主張を置き去りにしているように思える。

そして、これが何より厄介なのは、どちらかの派閥も「正義と日本の国益を掲げている点である」

「ロシア悪派」は、ロシアの侵略を抑えることが、悪い前例を作るのを防ぎ、かつ来るべき中国の覇権も抑えることに繋がると考えている為に、正義を背負って感情的になっている。

反対に「ロシア擁護派」は、日本が西側と同調し、ロシアを叩きすぎると、ロシアから見れば「敵(ウクライナ)の味方(日本)は=ロシアの敵」となり、かつ「敵(アメリカ)の敵(中国)は=ロシアの味方」となってしまう。それを防ぐ為にロシア擁護派はロシアにも事情があるということを言っているのである。

では、今回のロシア・ウクライナ紛争においての最適解はあるのだろうか?

実はこれもリップマンの「世論」にヒントがあったのである。

リップマンは、「ちょっした事実」「創造を伴う想像力」「信じる意志」で人々が頭の中で作った環境を疑似環境(or脳内環境)と呼んだ。

 

そしてその疑似環境に反応して、人は何かしらのアクションを起こすのだが、それは必ず現実の環境に作用するのである。

 

もし「ロシア悪派」と「ロシア擁護派」が実際にはそれぞれ真実に近づいておらず、「ロシアという国は○○に違いない」と頭の中で思い込んでいたとしても、その思い込みの疑似環境に対して何かしらの行動を起こしたら、好むと好まざるに関わらず現実のロシアには何かしらの影響は確実に及ぼしてしまうのだ。

これをそれぞれシュミレーションするならば、「ロシア悪派」が主張するように日本がウクライナ支援などの行動を起こすと、ロシアは日本を敵と見做し、中国と同盟を組まざるを得ず、第三次世界大戦のリスクが高まる。

反対に「ロシア擁護派」が主張するように、日本は西側に同調せず、中立の立場を取れば少なくとも、ロシアは日本を敵視しない。さらにウクライナ人にとっては納得できないかもしれないが、ウクライナ非武装中立化」で紛争を治めるならば、ロシアもあえて中国と同盟を組む必要もなくなり、第三次世界大戦のリスクは避けられるのである。

だが残念ながら世界と日本は「ロシア悪派」の勢力が大きく、破滅への道を突き進んでいる。

その結果、今後日本は中国、北朝鮮、ロシアの三国を相手に同時に戦わねばならない状況になっているのだ。

陸上自衛隊の陸将、用田和仁氏が警告を発しているように「日本は三正面作戦など取れるわけがない」のである。

 

日本と世界は、本当に「滅びるか、否か」の岐路に立っている。

闇夜の一灯を見つけることができるだろうか…。

 

 

 

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