崖っぷち日本のユートピア社会学by大山昇悟

崖っぷちに立っている日本をどうしたらユートピア(理想郷)にできるか日々考え答えを探していくブログです

夏休みはこれを読もう❗️ミステリー小説「幻夏」❗️

「効果的な休養研究所」気分転換編

 

今回は、太田愛ミステリー小説「幻夏」(角川文庫)を紹介します。

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作者の太田愛さんの略歴です。(以下Amazonより引用)

【太田 愛:香川県生まれ。1997年テレビシリーズ「ウルトラマンティガ」で脚本家デビュー。「TRICK2」「相棒」など、刑事ドラマやサスペンスドラマで高い評価を得ている。2012年『犯罪者 クリミナル』(上・下)で小説家デビュー。13年には『幻夏』を発表。日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)候補となる。】

 

この「幻夏」というミステリー小説は、以前紹介した「犯罪者」の続編というか、3人の登場人物を中心にした3部作の2作目です。(微妙に話しが繋がってないわけではありませんが、読む順序が逆になっても大きな支障はありません)

 

⬇️シリーズ1作目の紹介記事

www.aitosatori.com

 

自分はもともと推理小説は好きで、ハマり出したのは中学生くらいからです。

 

20代になってからは、真面目な本を中心に読むようになりましたが、現在でも息抜きに時々読んでいます。

 

ちなみに、電球を発明したあのエジソンは、1日18時間くらい仕事をしていたようですが、「私は息抜きに探偵小説を読む」と述べています。

 

まあ、そのエジソンの言葉にかこつけて、自分の行動を正当化している訳ですが…

 

では、肝心の「幻夏」のストーリーを簡単に紹介します。

【小学生6年生の夏休み明けの朝、相馬の友人、尚と拓の3人は一緒に学校に向かっていた。が、学校の校門が見えてくると、尚は突然、「ちょっと忘れものした」と言って引き返すのだった。そしてそれが相馬が見た尚の最後の姿であった。

 

尚は、忘れものを取りに、引き返して以降、その日は学校にも家でも姿が確認されず、次の日、母親が捜索願いを出す。すると行方不明になった当日、自宅から8キロほど離れた河原で尚の姿が目撃されていた。夕方、尚はなぜかその河原で1時間ほどたたずんでいるのが目撃されていた。

 

そしてそれを最後に尚は完全に消息を断つ。

23年後、刑事になった相馬。ある日、少女失踪事件が起きる。

犯人は小児性愛者の犯行だと推測され、すぐに近所の容疑者が浮かび上がる。しかし相馬は少女失踪の現場の木に残されていたある印を発見する。その印は、23年前に尚が失踪した河原にあった流木にも残されていた印と同じものだった。

 

少女失踪事件と、23年前の尚の失踪事件とは関連があると疑った相馬は、知り合いの興信所の友人と一緒に独自に捜査を始めるのだった】

 

ストーリーの骨子は、「殺人事件の冤罪の罪で服役した父親と、その家族の物語」です。

 

そして、ひとつの冤罪をきっかけにして、それに関係した、警察、検察、裁判官などが20年以上経って発生した少女失踪事件と微妙に絡んでストーリーが展開していきます。

 

そしてこの作品は、最近のミステリーにしては珍しく、たくさんの謎が提示されています。

 

例えば、「尚が失踪する直前にすれ違った刑事が、何気なく豪華客船の船室について尋ねたり」「尚が失踪した夕方に、なぜか1時間ほど河原で佇んでいたり」「母親が尚の行方を20年以上経ってから興信所に依頼したり」また、「尚の失踪現場と、23年後の少女失踪現場に同じ印が残されていたり」…

 

とにかく、謎が多く提示されていきます。普通は、あまり謎が多いと、まるで連立方程式を解かされているようで、ストーリー自体に入り込むのを困難にさせてしまうものです。つまり読み手をウンザリさせてしまうのです。

 

このミステリーが凄いのは、謎の多さについて、読者に余計な頭を使わせず、ある意味ウンザリさせずに、ジグソーパズルのピースを一つ一つ埋めていき、ページをめくる度に、読者に全体像を把握させていくところです。

 

なので、読者は難しい数学の授業を受けている気にはならないでしょう。

 

そして作者の太田愛氏の凄いところは、読み進めていけばいくほどストーリーが面白くなっていくところです。

 

そして、後半はすべてのパズルのピースが埋まるのですが、そこで今まで単なる「謎」だった出来事が、ある種の叙情的な感情を読者にもたらします。

 

それはあたかも日本推理小説の最高峰と言われている、横溝正史「獄門島の一場面で、和尚さんがお寺に向かって歩いて行くシーンにも比肩するかもしれません。(わかる人にしかわからないですね、これは)

 

普通は、知的ゲームのごとく謎が多く提示されると、ストーリー自体の面白さが低減していくものです。そしてそれは同時に登場人物の感情描写をも低減させてしまい、人間ドラマの面白さが失われてしまうのです。

 

ですが、この作品は、緻密なプロット、ストーリーの面白さ、謎が解かれていく楽しさ、個々の登場人物が背負った人生の重石、物語に流れる叙情的な雰囲気など、両立しがたい要素を全て両立しえた稀有なミステリー小説だと思います。

 

とにかく、読者の予想を裏切る展開が何回も繰り返されます。自分はまったく予想ができませんでした。

 

あと、Amazonのレビューでは、「この小説を読んで作家になるのを諦めた」というレビューをしている人がいましたが、作家志望の人を絶望させる、太田愛氏は恐るべし!です。

 

なお、この作品に登場する修司という青年が、「犯罪者」という作品に登場し、なぜ興信所でバイトをするようになったのかが、描かれているようなのです。自分はそのことを後から知ったので未読ですが、順番的には、「犯罪者」の方から読んでみてもいいかもしれません。ですが、読まなくても「幻夏」を読むには差し支えはないと思います。

 

ともあれ、太田愛「幻夏」は、いわゆる徹夜本と言えるので、一気読みをオススメします。

 

気分転換点98点

 

 

 

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