崖っぷち日本のユートピア社会学by大山昇悟

崖っぷちに立っている日本をどうしたらユートピア(理想郷)にできるか日々考え答えを探していくブログです

中国による「台湾・尖閣」侵略作戦シミュレーション③

前回、前々回の記事で中国による「台湾のみの単独侵攻」尖閣のみの単独侵攻」が合理的でないことを解説した。

今回の記事では、最も可能性が高い「台湾と尖閣の同時侵攻」を考察する。

以下は、日本安全保障戦略研究所による「日米台連携メカニズムの構築」から抜粋し、要約したものである。

台湾と尖閣の同時侵攻

台湾と尖閣の侵攻戦力の主体となる部隊は、次の理由により東部戦区部隊が担うと予測できる。

①台湾の対岸に位置し地理的に最も近いこと

習近平国家主席が軍務を経験した戦区であること

人事・装備面で重視されており習主席自ら部隊訪問を行なっていること

活発な活動・演習状況が見られること

なお、南部戦区部隊は南シナ海正面を防衛しつつ、東部戦区部隊の攻勢を支援することになるとみられる。

 

「台湾・尖閣の同時侵攻」が行われる可能性は、以下の理由から、三つの侵攻パターンのうちで最も高いとみられる。

①中国軍の戦略家の文献では、台湾と尖閣諸島を中国軍が太平洋に出るための「大門」の「かんぬき」として、戦略的に一体不可分の地政学的価値を持つと見ており、実際の中国軍の海空軍の演習や訓練でも宮古水道を通過して西太平洋に出て、それから台湾東岸に周りさらに台湾を周回する経路、また日本本土太平洋岸に出る経路が多数確認されていること

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②A2/AD戦略(第一列島線第二列島線を突破して西太平洋を支配する戦略)を基本とする中国軍にとって、米軍空母舞台の来援阻止のために海空軍と各種ミサイル戦力により、西太平洋を制圧しつつ、台湾の南北にある宮古水道とバシー海峡の両翼から台湾を包囲するのが、最も早期かつ確実に米軍来援を阻止・遅延する態勢を確立でき、台湾を完全に孤立させることができること

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③米軍基地がある沖縄と、自衛隊が配置されている南西諸島に対する東部・北部戦区の海空軍の支援を直接得られ、上海以北には港湾や航空基地、兵站拠点も多く距離的にも近いことから、中国軍が戦略攻勢を取る条件が整っていること

④奇襲的なミサイルの集中攻撃、宇宙・サイバー・電磁波戦での戦略先制奇襲に成功すれば、日米の戦力発揮は一時的に困難となり、反抗作戦を遅延させ、その間に台湾を一挙に占拠する可能性があること

 

しかしこの侵攻には、以下のような問題点もある。

①台湾の両翼包囲には大規模侵攻戦力の集中が必要となり、北部戦区歩の一部も支援する必要がある。南部戦区も南シナ海正面の防衛に主力を使用するためバシー海峡からの攻勢に全力で参加はできないと見られる。

結果的に両翼から同時に台湾を奇襲的に包囲するに十分な戦力を集中するには限界があるとみられる。

②逆に在沖縄・日本本土、在韓国の米軍が存在する限り、台湾に対する宮古バシー海峡からの両翼方位による分断孤立は容易ではないと見られる。

 

結論的に言えば、中国軍としては在沖縄・日本本土・在韓国の米軍の撤退または不介入を保障できる情勢のもとで宮古水道正面を主攻としバシー海峡方面からの助攻による台湾両翼方位作戦を奇襲的に行い、一挙に既成事実化してしまう可能性は高い。その際には一体と見ている尖閣諸島を台湾本島の侵攻と同時または直前に奪取すると見られる。

 

侵攻時期については各種要因に左右されるとみられる。一つは中国国内の権力闘争や、戦力の整備等であり、もう一つは米国内での2024年の大統領選の帰趨である。

以上から、台湾本島の侵攻については条件成熟を待つため2023年から2027年となる可能性が高い。特に中国人民解放軍創設100年を迎える2027年が節目の年になるとみられる。

もし2027年までに情勢が成熟せず、同時期までに実行できなかった場合も、さらに長期の一貫した戦略目標として、習近平主席の任期中に「強軍の夢」達成の中間目標年である2035年までに達成すると見ることができよう。

以上、「日米台連携メカニズムの構築」より①台湾のみの単独侵攻②尖閣のみの単独侵攻③台湾と尖閣の同時侵攻を概説した。

この書籍は自衛隊の幹部を歴任したような人達が共著者として名前を連ねており、軍事的には信頼できる書籍ではあると思う。

だが筆者は日本と世界の混沌とした情勢を見るにつけ一抹の不安を覚えるのだ。

例えばこのシリーズで3回に渡り中国軍の台湾(及び尖閣)の侵略パターンを考察してきたが、そのいずれも自衛隊が出動することを前提に仮説が組み立てられていることである。

ちなみに、もし台湾と尖閣の有事に自衛隊が動くとしたら、2015年に成立した平和安全法制に基づくものと考えられる。

平和安全法制には「存立危機事態」「重要影響事態」の二つの概念が入っている。

「存立危機事態」とは「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」と定義される。

「重要影響事態」とは「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」と定義される。

だが、法律としては整備されていても、自衛隊を動かすのはあくまで自衛隊の最高指揮監督権のある内閣総理大臣なのだ。

もし、尖閣と台湾が中国軍に侵略され始めた時に、その時点での総理大臣が日本の領土を断固として守るべく決断出来なかった場合もあるのではないだろうか?

もし、その時にアメリカが台湾と尖閣を守るべく米軍を動かさなかったら、日本は単独で行動できるのだろうか?

さらに、不安なのは日本だけではない。ペロシ議員訪台後の台湾の世論調査で、台湾の人々の6割が「軍事衝突を心配していない」と回答したというデータもあり、台湾国民の無関心ぶりが現れている。

アメリカでもペロシ議員訪台後に中国がミサイルを台湾沖に11発発射した際、米国防総省のジョン・カービー報道官が「我々は台湾独立を支持していない」と発言するなど、日米台連携を弱体化させる要因も厳然として存在するのだ。

それにしても、なぜナンシー・ペロシ下院議長は8月に台湾訪問を強行したのだろうか?その理由としては、11月の中間選挙に向けてのアピールであると見る向きもあるが、ロシア・ウクライナ戦争が丸く収まっていない時期にリスクが大きすぎないだろうか?

結果的にペロシ議員の行動は中国にとっては渡りに船になり、台湾周辺での軍事演習を常態化することができるようになった。

穿った見方かもしれないが、ペロシ議員の行動は中国が動きやすくするようにしているようにも見えるし、ひょっとしたら中国が台湾と尖閣を占領することでアメリカの一部の人達が得することでもあるのではないかと疑念が湧くのである。

台湾と尖閣の侵攻時期を2023〜2027年と予測されていたが、侵攻の必要条件、充分条件はかなりの程度まで整っているのではないかと不安は募る。

その不安を払拭する要因は世界中を見渡しても見当たらないように見える。が、筆者にはもしかしたら日本人一人ひとりの手の中に微かに希望があるかもしれないとも感じるのである。

日本人は未来を変えられる地点を横目でやり過ごしてしまうのだろうか…それとも…。

 

 

 

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